山内 俊哉



  • 金融ビッグバンの目玉「外為法」改正により、 外貨保証金取引のカバー取引で外為業務に従事。 ファンダメンタルズ、テクニカルで外為を予測。
    日経CNBC「朝エクスプレス」為替電話レポートに出演中
    日本FP協会会員(AFP)
    NPO法人日本テクニカルアナリスト協会認定会員


    【出演経験】
    テレビ東京「オープニング・ベル、為替コーナー」
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2010年2月 3日 (水)

ギリシャ債務問題からのユーロ崩壊の可能性は低い

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

今月2月12日からカナダのバンクーバーで冬季オリンピックが開催される。日本の代表選手も現地入りするなど、巷もオリンピックムードになってきた。フィギュアスケートやモーグルなどメダルの獲得の期待が高い種目もあり、今年最初の大きなイベントとして楽しみである。

オリンピックといえば、発祥の地のギリシャの債務の問題が昨年12月ドバイ・ショック以降クローズアップされ、これがユーロを押し下げる要因となっている。

ギリシャの債務問題とはそもそも何かということになるが、ギリシャは1981年の2次拡大でEUに加盟、2001年のユーロ流通開始前から財政赤字には懸念があった。世界的な経済危機が発生する前までは年4%の高い成長率を誇っていたが、同時に財政赤字もGDP比で3~8%ほど増加していた。しかも、昨年10月にギリシャ政府から2008年の財政収支と債務のデータに誤りがあったとして、財政赤字の比率が7.7%と約2倍に修正されるなど、増大する赤字からギリシャがデフォルト(債務不履行)に陥る懸念が出てきたというものだ。

現在、公表されている最新の数字でも財政赤字のGDP比は12.7%に達しており、このままでは財政赤字は2010年以降もEUが定めた財政基盤の3%からはかけ離れたものとなり、ギリシャ政府は2012年までに3%を達成するとしているが、到底不可能な状況である。また、公的債務もGDP比100%を超え、EU加盟国の基準の60%も大きく上回っている。こうしたことを受け、格付け機関フィッチやS&Pは相次いでギリシャのソブリン格付けを「A-」から「BBB+」へと1段階引き下げた。金融市場では急速にデフォルトリスクが高まったことでCDSプロテクション(信用リスクを回避したい場合の保険のようなもの)が買われ、スプレッドも拡大している。

こうした現状を見て、1999年1月から導入され10年が経過したユーロが、財政規律の乱れから崩壊に向かうという根強い「崩壊論者」もいる。歴史をたどれば1958年の欧州経済共同体(EEC)から約半世紀の時間をかけて統一してきたユーロが簡単に崩壊に至るとは考えにくく、最悪の場合にはギリシャがEUから離脱といことになるのではないだろうか。ただ、この場合はユーロの信認が大きく揺らぐことに繋がると思われ、ユーロが低迷する可能性がある。

2010年1月27日 (水)

オバマ大統領は製造業へ回帰したいのか

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

先週のコラムで書いた「金融危機責任手数料」の導入に加え、オバマ米大統領は大手金融機関への規制の案を昨日(21日)発表した。これを受けた米株式市場は金融セクタが主導する形で下落した。

オバマ米大統領は
「自己勘定トレーディング事業、すべての銀行に禁止」
「金融機関の規模について新たな制限を提案」
「銀行はヘッジファンドの所有、投資をしてはならない」
「金融機関の無責任が新規制設定の一因」
「米国には危機回避へ常識に基づく改革が必要」
「安価なマネーを利用し利益をあげてはならない」
「金融機関の整理・統合を防ぐことも重要」
と発言、商業銀行の本来の業務である企業融資などに戻るべきともとれる内容である。

ちょうど米国では大手金融機関をはじめとした10-12月期の決算発表の真っ最中であり、こうしたタイミングで規制案が発表されるのは、大手金融機関が業績回復を機に高額報酬を復活させる動きを見せていることから、「中間選挙の前に納税者の不満を代弁した」と穿った見方をしているのは筆者だけであろうか。

英フィナンシャルタイムズ(アジア版)もコラムの中で、「大衆迎合主義的で危険だ」と批判、「今回の提案は極端な方針転換であり誤りだ」と論評している。

2008年の米リーマン・ショックまでは、中国など新興国が世界の工場となる一方で、米国など先進国は金融などの規制を緩和することで成長率を維持してきた。この規制案の全てが議会を通過するわけではないと思うが、米国は製造業やサービス業を中心とした産業構造に回帰したいのではないかと思える。オバマ米大統領が掲げるグリーン・ニューディール政策など新たな産業が生まれ、米国が世界をけん引する可能性もあるが、BRICsなどの新興国の安い労働力と比べると、いくら為替を意図的にドル安に誘導したとしても、米製造業が国際競争の中で勝ち抜いていくのは容易ではないであろう。

2010年1月20日 (水)

ウォール街とワシントンの温度差

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

昨日(14日)に経済紙を中心に、オバマ米大統領が大手金融機関や保険会社に資産規模に応じて課金する「金融危機責任手数料」を導入する方針を決めたとうニュースが報じられた。これは2008年9月に発生したリーマン・ショックなどの信用不安により、金融機関や自動車メーカーなどに投入された公的資金の損失を穴埋めするためのもので、資産規模が500億ドル(4兆5500億円)超の金融機関や保険会社(米企業の約35社、外資系企業の10~15社程度)に対して、今後約10年感にわたり資産規模に応じて課税するというものだが、これらの企業にとっては事実上の増税となる。オバマ米大統領は2月初旬の予算教書に盛り込んで、今夏からの実施を目指しているようだ。

この「金融危機責任手数料」導入の背景には、公的資金の投入によりバランスシートが拡大し、1兆ドルを超える米財政赤字の補てんを意図していることもあるが、公的資金の投入により破たんを免れた米大手銀行が、2009年7-9月期に軒並み好業績をあげ、高額報酬を復活させつつあることから、このところ支持率が低下してきているオバマ米政権の米中間選挙を睨んだ選挙対策の色の方が濃いのではないか。

当然、大手金融機関の首脳からは反発の声が聞こえてくる。また、公的資金を受けた自動車メーカーが対象外となることで不公平感は否めない。また、外資系銀行が対象になっていることも、今後議論を呼びそうであるが、欧州でも英国やドイツ、フランスが銀行員の一定以上の賞与に高率の税を課すことを表明(賞与ではなく基本給のアップで対抗を考えているところもあるようだが)しており、概ね世論の支持を得ていると思われる。

ウォール街(金融)とワシントン(政治)は、公的資金の投入をめぐっても温度差があり、リーマン・ブラザーズの破たんから深刻な信用不安を招いたという説もある。今後もワシントンからいろいろな規制が出されると思うが、規制がドルの信認につながるのか、資金がドルから逃げていくのかは歴史が判断することになるだろう。

2010年1月 6日 (水)

2010年のサプライズは

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

2009年は回復に向けて動き出した年であると同時に、米国では黒人初となるバラク・オバマ氏が大統領に就任、日本では戦後の長期にわたり政権を担ってきた自民から民主党へ政権が交代したりと、変革の年といえるのではないだろうか。2010年はカナダのバンクーバー・オリンピック(2/12~2/28)、中国の上海万国博覧会(5/1~10/31)、南アフリカのサッカー・ワールドカップ(6/11~7/11)と大きなイベントが予定されている。また、政治面では英国の総選挙や米国の中間選挙、日本の参議院選挙などが予定されている。

こうした中で、3つほど、2010年の大胆な仮説を立ててみたい。

アフガニスタンへ3万人の増派を決めた米オバマ政権は、イランの核開発問題が進展しないことから、イランへの制裁を強化するとともに軍事的な圧力をかける。イラン内部では改革派が治安部隊と衝突を繰り返し、戦闘モードへ。イランの政情不安を背景として、原油価格が再び1バーレル=100ドルを超え、原油価格の上昇から米国がスタグフレーションに陥いる。米景気の悪化が先進国へ飛び火し、資金のホームバイアス(資金の自国への回帰)や、「有事のドル買い」などで1ドル=105円を超えるようなドル高となる。

2009年は保八(8%の成長)が達成できることが確実と思われる中国だが、かつての日本や韓国がそうであったように、上海万国博覧会を機に一部で発生しているバブルを鎮静化するために中国政府が引き締めに走る。これにより、上海総合株価指数などをはじめとした株価が急落、4兆元の大規模な景気対策の効果も追いつかず、失業率の上昇や可処分所得の低下など中国がアジアを中心とした景気を牽引できなくなる。中国に輸出を依存している豪やニュージーランドの景気が低迷し、両国通貨が大幅に売られる。また、中国が米国債の大量保有ができなくなり、経常黒字国の円が買われるようになり、1ドル=70円を割り込むような大幅な円高が進む。

参議院選挙で連立与党の民主党・社民党・国民新党が過半数を取れず、再び「ねじれ国会」へ。重要法案の審議が進まず、民主党は連立政権を解消し、自民党を含めた政界大編成へ動く。政治的な混乱から日経平均株価が大幅な下落となり、日本経済は深刻なデフレへ陥る。日銀はデフレ打破のため超低金利政策を継続、マイナス金利も持さない構えを見せ、円が再びファンディング(キャリー・トレードのために借りられ売られる)通貨となり、1ドル=110円を超えるような大幅な円安となる。

悲観的な仮説ばかりなので、こうなって欲しくないという強い思いも込めた。

2009年12月23日 (水)

2010年の「寅年」に向けて

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

デンマークのコペンハーゲンでは、国連気候変動枠組条約(UNFCC)を受けて設置されたCOP15(締約国会議:Conference of Parties)が開催されているが、先進国と途上国の意見の食い違いが大きく、政治合意に至らない可能性が高くなってきている。地球規模でCO2の削減が合意されるのかは、CO2の約6割を排出する中国と米国の意向にかかっているといっても過言ではないが、2010年の干支が「寅」であり、「寅」が意味する「決断力と才知」「実行力」を見せて、未来への決断をしてほしいものだ。

株式市場の「寅年」ジンクスは「大荒れ」だ。12年前の1998年は日本の四大証券の一角の山一證券や北海道拓殖銀行など金融機関の破たんが相次いだ年だし、その12年前の1986年は1985年のプラザ合意により急激な円高が進んだ年でもあった。1974年は第2次オイルショックの翌年であり、狂乱物価となった年でもある。

2010年の日本はどのような年となるであろうか。12月14日に発表された日銀短観では、9月調査に比べ、大企業製造業、大企業非製造業、中小企業製造業で改善を示した。また、2010年3月の先行き見通しでも改善が予想されている。日銀短観とは資本金2000万円以上の資本金を有する約21万社の中から業種別、規模別に約1万社を抽出した標本調査である。この短観の数値だけを見ると、景況感が改善しているように見えるが、内情はデフレ傾向が深刻化しているようだ。生産設備と雇用に過剰感があり、円高により交易条件も悪化している。加えて中小企業(資本金2000万円以上1億円未満)の製造業は停滞、非製造業では悪化をしている。日銀短観が全てではないが、なかなか明るい兆しが見えてこないようだ。

このまま進むと「寅年」ジンクスの株式市場の「大荒れ」は為替市場でも「大荒れ」を起こしそうだ。

2009年12月 3日 (木)

通貨で為替を捉えてみよう

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

11月の下旬に入り円高が加速し、1995年4月19日の円の史上最高値の79円75銭以来となる、1ドル=84円82銭の円の高値を付けた。新聞やテレビなどでも1円円高になったら○○億円の損失というニュースが聞かれるようになった。

FXが広く一般に認知されるようになって、外国為替の取引を身近で感じられる方が多くなったが、いろいろな機会に話しを聞くとドル/円というセットで捉えられている方が多くいるようだ。このため、リスク資産への投資のためにドルのキャリートレードと円のキャリートレードが起こっている時や、リスクを回避するために、ドルと円が買い戻されるという現象を理解するのに苦労されているようだ。

もともと外国為替は2国間の通貨の取引であることから、ドル/円という捉え方で問題はないのだか、先々の動きを予想するときは、個々の通貨がどのような動きになっているかを把握しておいたほうが良い。方法としては、主要ないくつかの通貨をピックアップして強弱を比べてみる。通貨の実効レート(貿易加重平均 = 貿易相手国の比率と為替レートにより、自国通貨の価値を指数化したもの)を参照して見るなどの方法がある。後者は中央銀行のホームページに掲載があるところもあるが、英中銀の(Statistical Interactive Database - interest & exchange rates data)に主要な国の実効相場が数値化されている。

こうした通貨別の動きを見ることにより、その国の通貨安によって円高なのか、円が全体的に買われているのかが見えてくると思う。そして、その通貨が下落している要因が「円高」であれば、円が弱含む要因(GDPの悪化など)や本邦当局者の牽制発言がでると流れが反転する可能性があるだろうし、その通貨だけが下落しているのであれば、その原因を探りやすくなるのではないだろうか。

2009年11月25日 (水)

良好な成長見通しの一方で懸念も

OECD(経済協力開発機構)が11月19日に発表した経済見通しでは、2009年、2010年、2011年の成長見通しを下の表のとおり発表した。これによると、リセッションに陥らなかった豪が2009年にプライス成長を維持するものの、他の国はマイナス成長となりそうだ。しかし、2010年以降はプラス成長が維持され、2011年にかけては、緩やかながら成長が拡大する見通しである。

OECD11月景気見通し(No.86)
http://www.oecd.org/document/18/0,3343,en_2649_33733_20347538_1_1_1_1,00.html

【OECD成長見通し】

2009 2010 2011
米国 -2.5% +2.5% +2.8%
日本 -5.3% +1.8% +2.0%
ドイツ -4.9% +1.4% +1.9%
英国 -4.7% +1.2% +2.2%
豪州 +0.8% +2.4% +3.5%
NZ -0.7% +1.5% +2.7%
source:OECD

OECDのエコノミストも優秀な人材をそろえているだろうから、大きく見通しが誤っていないように期待したい。同見通しでは日本はデフレの状況下にあり、政府レベルの補助金などの助成がなければ、更に失業率が2%程度悪化しかねないとしている。ただ、日本は財政赤字が大幅に膨らんでおり、更なる歳出拡大は難しいとみられることから、女性の社会進出を進めたり、環境技術を発展させたりすることで新たな成長を目指す必要があると、グリア事務総長は述べている。また、米国やユーロ圏では、2010年年末まで、現在の低金利の状態を続けると予想している。

先の英国で開催されたG20でもリセッション脱却のため、財政出動の拡大にコミットしていることから、長期間の低金利や量的緩和が続けば、過剰流動性(金余り)から、新興国への資金流入やエネルギーなどへの資金の流入が繰り返される可能性がある。現在は、アジアや新興国を除いて、世界的なリセッションのからの回復初期にあるとみられることから、物価も抑えられているが、新たな規制の枠組みを作らないと、2007年や2008年のような状況が繰り返されるのではないかと危惧している。

2009年11月18日 (水)

通貨高と通貨安とどっちがよいの?

昨年の世界的な経済危機や本年春に発生した新型インフルエンザの影響、国内では景気対策による高速道路の1000円効果などもあり、苦しい経営状況が続いている日本航空が政府主導で経営再建に向けて動き出している。航空業界には、昨年秋からの円高はあまり支援となっていないようで、海外旅行者数も2009年前半には大きく落ち込んでいる。

【2009年出国者数】

出国者数 前年同月比
1月 1,172,539 -13.4%
2月 1,359,580 -1.0%
3月 1,419,042 -2.5%
4月 1,201,614 +1.6%
5月 1,036,356 -18.3%
6月 947,928 -25.5%
7月 1,276,275 -4.2%
8月 1,516,588 +2.1%
9月 1,580,000 +15.3%
source:1~7月法務省、8~9月日本政府観光局

日本では円高が進む局面で必ずと言っていほど、経団連などから円高を嫌悪する発言が聞かれる。これは、日本が輸出型の産業構造であり、円高は企業業績を圧迫するからであろう。しかし、一方では、円高が輸入物価を押し下げ、実質の可処分所得が増えるとの意見もある。どちらが良いかはエコノミストなどの専門家に任せるとしても、景気が後退している状況の下での円高は好ましくないのではないだろうか。

なぜならば、外需に依存している日本の産業構造に変化がない以上、円高によって輸出産業は大きな打撃を受け、これが賃金の低下や雇用の喪失につながる可能性があるからで、更にこうしたことが家計の可処分所得を低下させ、「安いものしか買えない」というデフレを引き起こすことになる。ここに更に円高が加わると、輸入品の価格が低下(円高による実質の価格低下)することから、国内では競争力を高めるため、更なる人件費の削減や雇用の喪失が起こり、これがデフレのスパイラルにつながっていくことになろう。

ただ、これにも反論があり、原材料や原油などのエネルギー価格が円高により低下するというものがある。また、通貨が高くなれば、対外的には可処分所得が増えることにもなる。こうしたことが、「通貨が高くなった国で滅んだ国はない」という言葉につながっているのかもしれない。今後も、少子高齢化が進む日本では外需に頼らざるを得ない構図に変わりはないと思われることから、どちらが本当にメリットがあるのか、財務省や日本銀行などには見極めてもらわなければならない。

2009年11月11日 (水)

出口が見え始めたのはどこか

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

最近は朝晩めっきり冷え込むようになり、特に朝のひきしまる空気は気持のよいものだ。秋も深まり、行楽シーズンを迎え、各地は紅葉を楽しむ観光客で賑わっているようだ。紅葉見物に山間部に行くことが多いと思うが、いくつかトンネルを通ることがあるだろう。トンネルにも短いのものと長いものがあるが、長いトンネルに入ると出口が見えるまでつい不安になってしまう。

11月の3-4日に米国では公開市場委員会(FOMC)、4-5日には英国で中銀(BOE)金融政策委員会、5日には欧州で中銀(ECB)理事会が開催された。この3つの国と地域では昨年秋からの金融や経済危機に対する出口の違いが出てきているようで、出口政策の道筋を示せなかった米国、出口が遠のいた英国、出口が近づいた欧州と三者三様となった。

米FOMCでの声明では「長期にわたり(for an extended period)」という文言が維持される一方で、、エージェンシー債の買取枠は「最大2000 億ドル」から「1750 億ドル程度」に縮小された。ただ、これは制度が活用されなくなっただけで、出口政策に向けたものではない。景気に関しても住宅の回復が定着してきたと前向きを示したものの、金融セクタを除くと全般的には前回と変わっていないとの認識だった。

英BOEは、250億ポンドの資産買い取り枠の増額を決定、声明では「経済活動の回復は緩慢なものになる見込み」としながらも「これまでの緩和による著しい刺激効果が経済に浸透している 」「資産買い入れプログラムは資産価格上昇に寄与 」と資産買入プログラムに関して肯定的な見解を示した。ただ、250億ポンドの資産買入枠拡大は、従来の中銀の主張の「0.25%よりも小幅な政策金利の変更を行うようなもの」と併せて考えると、事実上の利下げに踏み切ったとも言えなくはないであろう。

ECBでは、トリシェECB総裁が記者会見で「現段階で私に言えるのは、12か月物LTROが今年を過ぎて延長されることを市場は予想していないということだ。私は市場の見方を打ち消すようなことを言うつもりはない」と発言し、出口に向けて動き出したというようにも見える。ただ、「市場の機能を変更すること、ことは我々の意図するところではない」とも発言しており、本格的な出口政策を行うまでには達していないことを示しているようだ。

一時期、一番出口が近いと言われていた英国が現時点では一番遠くなっているのも皮肉な話だが、本格的な出口政策がとられるまでは、市場は不安と隣り合わせの中で動いていくことになろう。

2009年11月 4日 (水)

英国の凋落が始まる?

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

今週月曜日の26日に民主党が政権与党して初めて第173回臨時国会を召集した。鳩山首相の所信表明演説から、各党の代表質問を経て、11月第1週にも予算委員会が始まる予定である。代表質問では日本郵政の社長人事を元大蔵次官としたことから、「脱官僚」、「官から民」の流れに逆行するとの論調が新聞の社説やコラムで数多く見られる。日本の動きとはやや異なるが、G7を中心に昨年秋の世界的な金融危機や景気後退などを教訓として、規制を強化する動きがみられるようになってきた。

最近の見たニュースの中でも特に印象に残っているのが、ヘッジファンドが国際金融都市ロンドン(シティ)からスイス(チューリッヒ)に拠点を移し始めたというものだ。拠点を移す最大の理由がスイスの外国人富裕層に対する税制優遇だ。一方の英国では2010年春から所得税の最高税率が40%から50%に引き上げられる。また、仏、独も所得税率は40%~50%といずれもスイスよりは効率である。規制面から見るとEUでは、タックス・ヘイブン(租税回避地)に拠点を置くオフショアファンドの販売を禁止する意向であるのに対し、EU域外のスイスは地理的にも、言語的にも利便性が高い。

為替市場でも2007年の統計となるがロンドンの取引高は、1日平均1兆2590億ドルで、シェアも34.1%と2位のNYの6640億ドル、16.6%を大きく凌いでいる。また、英国の主産業は金融であり、GDPの約10~12%程度を占めているとも言われている。今のところ、スイスからの積極的な働きかけもあり、小規模ファンドの数十社が移動したに留まっているが、規制が強まるほどに金融立国である英国の地位が脅かされることになりそうだ。

2009年10月29日 (木)

神話が崩れた瞬間

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

産経新聞の電子版の記事によると、米紙ニューヨーク・タイムズのアンドリュー・ソーキン記者の著作「トゥー・ビッグ トゥー・フェイル」が20日発売された。日本では、「大きすぎてつぶせない」という意味になるが、昨年秋に破たんした米リーマン・ブラザーズが最終的に破たんに至るまでの経緯を同記者が200人以上に取材してまとめた本だ。

まだ読んではいないが、同電子版の記事を読むと、米政府はファニーメイ、フレディマックの政府系金融2社を救済したばかりであり、政府は救済に動けなかった。当時のポールソン米財務長官は公的資金では救済できない旨を銀行団伝え、英大手金融のバークレイズが最終的に買収する案が残った。330億ドルの融資が米大手金融機関から集まりかけたが、バークレイズがリーマン・ブラザーズ買収をするのに十分な資本があるか調査するのが先と英金融庁が待ったをかけたため、買収計画は失敗。ポールソン米財務長官はダーリング英財務相に電話をかけたものの、英政府の方針は揺るがなかった。といったような内情が書いてあるようだ。

米リーマン・ブラザーズをなぜ破たんさせたのかを常々疑問に思っていた筆者にとっては、ぜひ読んでみたい本の一つである。ここまでを読む限りでは、英国の金融庁が悪人のように見えるが、英国もバークレイズがリーマン・ブラザーズを買収して、もし破たんした場合を想定すると、こうした措置もやむえなかったのだろう。当時、筆者はこうした動きを知る由もなく、米リーマン・ブラザーズをサンデー・ポールソン(いつも重大なことは日曜日に発表していたことからこう呼ばれていた)に救済されると思っていた。リスクを察知して危機に備えたいものだ。

2009年10月21日 (水)

犯人は誰だ?

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

小学生の頃、お決まりのようにコナン・ドイル著のシャーロック・ホームズやアガサ・クリスティ著のエルキュール・ポアロなどの推理小説にはまってしまった。大人になった現在でも推理小説好きは変わらず、実用書を読む以外では、もっぱら国内作家になってしまったが、推理小説を読むことは多い。与えられた情報から犯人を推理するというのは、奇しくも、与えられた情報から為替相場を予想するのに似ている。ただ、大きく違うのは推理小説が引き算(物騒な話であるが登場人物が次々と殺されていく)なのに対し、為替相場は足し算(どんどん新しい情報が入ってくる)となることだ。

為替市場では昨日(15日)、ポンドが主要通貨に対して上昇、ポンド円は安値から幅にして約5円、率にして3.4%の大幅上昇となった。ポンドが上昇しだしたときは、それほど市場も関心を持たないが、経済指標などの発表や要人の発言などのイベントがないところで一定レベルを超えて上昇したときや急激に上昇しだしたときは、市場は上昇した理由を探しだす。そして、昨日もカタール政府系ファンドの英大手小売りの買収の噂や、スウェーデンによる英原子力発電開発への投資の噂、英中銀(BOE)金融政策委員による「将来的に一段の措置を講じるため、資産買入プログラムを一時休止する可能性がある」などとの発言という理由付けがされている。いわゆる犯人が登場するわけだ。

しかし、インターバンク(銀行間)市場では、各金融機関ともに守秘義務が課されていることから、簡単に真相はでてこないだろうし、市場も次の新しい材料(テーマ)に移ることから、気にしていられるのもせいぜい2~3日くらいであろう。このため、市場では真相はともかくとして、合理的で一番もっともらしい理由が残っていくことになる。かくして為替相場では、推理小説のように犯人を探す名探偵は登場せず、事件は迷宮入りとなってしまうのである。

2009年10月14日 (水)

懐かしいボイス・ブローキングの時代

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

オバマ米大統領も選挙運動のときに使ったと言われているTwitter(ツイッター)の人気が高まっているらしい。手軽なコミュニケーションツールとして、国内でも著名人に普及しだしているようでTVでも取り上げられている。ブログのミニ版のようなものであり、短い文章を書いていくだけの至ってシンプルなつくりだ。もともとは米国の軍事目的用だったインターネットの世界もここまで進化してきた。

今や外国為替の取引も電子取引が当たり前となっているが、ほんの10年くらい前までは、まだボイス(電話)の取引が主体だった。筆者は残念ながらインターバンク(銀行間)での勤務の経験もなければ、上田ハーロー(現トウキョウフォレックス・上田ハーロー)での円卓(スポットディスク)の経験もない。最近は円高が進み、再び1ドル=90円を割り込んできたことから、1995年4月の円が最高値の79.75円をつけたときの話題になることが多い。

彼らの話を聞くと、当時は、一部電子取引のツールもあったが、ボイスが主体だったそうだ。為替レートが大きく動くと当然スプレッド(売りと買いの価格の開き)は広がるし、ひどい時にはフィギュア・フィギュア(00-00)、ニーマル・ニーマル(20-20)といって、スプレッドが1円開くこともあったという。スポットディスクの経験者(当社社員)に聞くと、鮮明に覚えているのは1998年のロシア通貨危機で、この日は数時間で10円近く為替が動いた日である。このときはフィギュア・フィギュア(00-00)などが頻繁に出て、最初に取引した為替レートと最後に取引した為替レートが大きく違い、途中のレートでも取引が多数できたため、どの為替レートでいくら取引ができたのか、わからないくらいだったという。

さすがに今は電子取引が大半を占めていることから、2001年の米国の同時多発テロのときでさえ、1円のスプレッドは開かなかったと記憶しているが、円高が進んで円の最高値を更新するとドル円は未知の世界に入ることから何が起こってもおかしくない。

【円卓風景】

トウキョウフォレックス上田ハーロー

2009年10月 7日 (水)

「口は災いのもと」では終わらない

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

西洋のことわざに"Speech is silver, Silence is golden."(雄弁は銀、沈黙は金)がある。デジタル大辞泉(小学館)には、「雄弁は大事だが、沈黙すべきときを心得ていることはもっと大事だということ」と書いてある。逆に「沈黙は金、雄弁は銀」となると、「沈黙を守るほうがすぐれた弁舌よりもまさるというたとえ」と書いてある。同じような意味だが前者は、雄弁だが時には沈黙も必要、後者は、沈黙が雄弁に勝ると受け取ることができる。

雄弁といえば先週末から今週初めにかけて、藤井裕久財務相が為替について多くを語った。内容は「円高を容認している」と受け取れる発言を繰り返し、G20(主要20か国・地域)金融サミット前の米ガイトナー財務長官との会談では「円通貨を意図的に安くするような政策は実施しない」と強調した。これが週明けの円高の要因の一つとなり、円は約7か月ぶりに1ドル=88円台へと下落した。その後、「円高を是認したわけではない」と否定コメントを出し、急激な円高は一時収まっているようだが、動き出した流れがそう簡単に止まるとは思えない。

仮定の話であるが、更なる円高に進んだ場合に政府が介入を行うかどうかである。藤井財務相のこれまでの発言を見ると、内需を振興していく考えであり、そうなると、円安よりは円高の方が輸入物価が低下することから有利になることは間違いないと思われる。そこから考える限りでは、介入の可能性は低いのではないかと思うが、現在は外需に依存している産業構造であることから、急激な円高となったときには介入に踏み切る可能性も否定できず、個人的には介入に踏み切らざるをえないのではないかと思っている。そうならないためにも、藤井財務相には「沈黙は金」ではなく「雄弁は銀」の効果的な口先介入を行ってほしいものだ。

2009年9月30日 (水)

キャリー・トレードの条件とは

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

米リーマン・ショックから1年が経過した。リーマン・ブラザーズはインベストメント・バンク(投資銀行)として158年の歴史を閉じた。これによる信用不安が世界に波及し、銀行同士の資金決済が滞るという流動性不安を引き起こした。このため、米英などは大量の公的資金の投入、日銀・スイス国立銀行・カナダ銀行・欧州中央銀行・FRB・英イングランド銀行の6つの中央銀行でドルのスワップ協定を結ぶなど、金融不安を解消するため、政府及び中央銀行が一丸となって危機に取り組んだため、その後は大きな金融機関の破たんは起こっていない。

米リーマン・ショックによる世界経済の収縮はグリーンスパン米FRB議長の言葉を借りると「100年の1度の」危機ということになり、1929年の世界恐慌を連想させ、昨年は景気の回復や投資マインドが戻るのは十数年かかると言われていた。それが、たった1年でキャリー・トレードが再開しつつある。これを見ると人間とは恐ろしい生き物だと思う。どんな環境にも適用でき、怖さを忘れたかのように同じことを繰り返していく。もっとも、少しは知恵をつけているようだが。

キャリー・トレードは「金利の低い通貨を借りて、利回りの良い対象物に投資する取引」と定義づけられると思う。早い話が、余ったお金を低金利で運用しても仕方がないので、少しでも利回りの高いところで運用しようというものだ。ただ、いくら利回りが良いからと言って、ボラテリティ(変動率)が高いものはリスクを伴うことになる。そういった観点から、現在は早期の利上げが期待できそうな豪ドル、NZドルなどが通貨では買われやすい傾向がある。また、ブラジルや中国などの新興国の株価なども買われやすいといえそうだ。一方のファウンディング通貨(借りやすい通貨)は、低金利が長引きそうな米ドル、日本円、スイスフランがそうである。

キャリー・トレードも変遷があり、2001年ころからは台湾ドル、2005年ころからは日本円となった。現在は、大量国債を発行してい、過剰流動性を高めている米国ドルが(借り通貨)とされているようである。

2009年9月16日 (水)

脱石油は為替をも動かす?

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

本日発足したの鳩山由紀夫首相は、9月7日に都内で開かれたシンポジウムで、温室効果ガス(CO2)排出削減に関する2020年の中期目標を1990年比25%減を目指すと明言した。産業界は強い懸念を表明したが、一方ではC&T(キャップ・アンド・トレード)の導入や新たな産業の創造などにつながる可能性もある。

この温室効果ガスの削減に本腰を入れようとしているところがある。米国の国防総省だ。同省は燃料費が国防費のかなりの比率を占めていることやこれまでの戦死者などのデータを分析すると、燃料の補給や輸送での死者が戦闘の死者を大きく上回っていることがわかった。このため、化石燃料への依存から脱却できれば、燃料費を抑えることと戦死者を減らせるという一挙両得となる。化石燃料からの脱却は長期的な視野に立てば、産油国である中東(アラブ)への依存も低下させることとなり、これまで感情的にイラクやイランへ介入してきた米国も関心を示さなくなるかもしれない。こうした流れが世界平和につながってくれるとありがたいのだが。

脱化石燃料は需給の関係から原油価格が下落することになり、米国の経済にとってはかなりの好材料となる。また、原油価格の下落は資源国通貨の下落を招くことになるだろう。米国防総省も重い腰を上げたばかりであり、この効果が出てくるのは数年先の話しとなると思われる。

ただ、エネルギー革命も行き過ぎると恐ろしいことになる。米国防総省が開発を依頼したとされる「近くの有機物」をエネルギーに変え動く戦略ロボットというのがあり、理論的には「死体」をエネルギーに変えて動くことも可能(?)だ。知能を持てば死体を量産するという非常に恐ろしいSFじみた話しもFox Newsなどで出ていた。

2009年9月 9日 (水)

西洋人と東洋人の違い

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

先日、TVで面白い番組を見た。西洋人と東洋人のものの見方の違いに焦点をあてた番組だ。読者の中にもご覧になられた方がいると思うが、番組の内容を簡単に記すと、丸い花びらで、茎がまっすぐ、葉が1枚の花の絵がある。4つの花の絵があるA群とB群があり、どちらの仲間かという問題で、A群とB群の花は、花の形や茎の形、葉っぱのつき方が全て違う。東洋人の多くが花びらの形が似ているものが多いA群を選んだのに対し、西洋人は一見ばらばらに見えるB群を選んだ。西洋人はなぜB群を選んだかというと、花と茎と葉をそれぞれのパーツに分解して、B群は茎がまっすぐという共通項をみつけたからだ。

また、真中の人が笑っている5人の絵が2枚あり、1枚は残りの4人が笑っているように見える絵、もう1枚は怒っているように見える絵を順番に見せて、真中の人は幸せそうに見えるかという問題を出したところ、東洋人は1枚目の絵は幸せそうに見えるが2枚目の絵は幸せそうに見えないとの回答がほとんどで、西洋人は1枚目も2枚目の幸せそうに見えるとの回答がほとんどだった。あと2問設問があったが、やはり東洋人と西洋人は異なる回答となった。

こうした設問から、西洋人はカテゴリーで物事を捉えることや対象物を中心にしてそれのみを捉える傾向があり、東洋人は周辺も含めて全体を捉えることや関連性で物事を捉える傾向があることがわかった。

相場の世界でも西洋人と東洋人の違いがあるのではないかと思う。比較的東京やアジア時間の値動きが少なく、ロンドンや米国時間に値動きが大きくなるのは、西洋人の市場参加とは無関係ではないだろう。特にチャート上のポイントやストップロスのオーダーが集中しているポイントは西洋人から見ると集中しやすく狙いやすいのであろう。西洋人の特徴をつかみこうした感覚で相場を見てみるのも面白いのではないだろうか。

2009年8月26日 (水)

株価主導はいつまで続くのか

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

先週、夏期休暇で帰省をしていた。駿河湾沖で地震があり、東名高速道路の牧の原付近の道路が約100メートルにわたり崩落、Uターンでは迂回を余儀なくされた。国道1号線のバイパスを使ったのだが初めての道だった。混んでいることは承知していたが、ラジオを聞いても、渋滞の詳細はつかめず、通常の3倍ほどの時間がかかってようやく高速に乗ることができた。
情報が少ないと不安が増すということを実感させられた。

現在の為替市場は株価、ことに上海総合株価指数が主導する展開となっていて、株価の動向を予想するという意味においては、為替を見ている者としては圧倒的に情報量が少ないといえる。とはいっても、株価指数の動きと為替レートをみてみると、ある程度の分析はできそうだ。下の表を見てもらいたい。先週末(8/14)と昨日(8/20)の上海総合株価指数、NYダウ、主要な対円の為替レートを比べたものである。これを見ると上海総合株価とNYダウは連動していない。一方、対円通貨の為替レートは比率は異なるが上海総合株価指数と連動しているようだ。過去を見ても1月中旬に上海総合株価指数が上昇に転じ、NYダウが3月上旬に上昇に転じるまでも株価指数同士は連動せず、対円通貨は連動した。

【下落率】

日付/株価指数,通貨 上海総合 NYダウ USD/JPY EUR/JPY AUD/JPY GBP/JPY
2009/8/14 3,046.97 9,321.40 94.82 134.62 78.86 156.81
2009/8/20 2,911.58 9,350.05 94.17 134.23 78.26 155.40
下落率 -4.44% +0.31% -0.69% -0.29% -0.76% -0.90%
source:Bloomberg, Uedaharlow

景気のけん引役となる両国の株価指数の非連動があまりに長期間に及ぶことは考えにくく、米リーマン・ショック以降は上海総合株価指数がNYダウに先行していると考えると、上海総合株価指数の回復が見られない場合には、NYダウが下落し、円高に向かう可能性が一段と高くなるといえそうで、景気対策によりダブついた資金が株価を押し上げたことへの警戒(規制)を中国当局がどのように示してくるか、中国の動向からも目が離せないようで、まだまだ株価主導の展開が続きそうである。

2009年8月12日 (水)

日本にも注目して

裁判官制度が開始され、初の判決が昨日(6日)行われた。新聞の論調などを見ていると今回の審理過程や判決については好意的意見が多いが、中央と地方でのハード、ソフト等での格差を心配する声もあった。制度自体に反対する意見もいまだに多いが、この制度の開始により、裁判に国民の目を向けさせたことは評価できよう。

政治もそうだが、外国為替市場でも日本の動きが注目されなくなってきている。いい例が、政権交代の可能性がある今回の総選挙の報道だ。ワシントン・ポストかニューヨーク・タイムスかは忘れたが、日本の選挙がベタ記事で扱われていた。以前はジャパン・アズ・ナンバーワンやジャパン・バッシングなどという言葉が生まれたくらい日本の影響力も強かったが、今やジャパン・パッシング(通過)とさえ言われるようになった。経済指標においても日本のGDPや失業率、貿易収支などで外国為替レートが変動することが少なくなってしまった。

8月17日(月)には日本の4-6月期GDPが発表される。2008年10-12月期、2009年1-3月期と2期連続で年率換算2ケタのマイナス成長が続いていたが、4-6月期のGDPではプラス成長を回復する見込みである。しかしながら、こうした経済指標を背景とした円買いが起きないのが今の市場の現状だ。一言でいえば日本に目が向いていないということであり、悲しいかな日本の円は低金利からのキャリートレード元通貨としての位置づけしかないようだ。

こうした状況をみると、為替相場では、仮に円高局面が来たとしてもそれほど長続きしないのではないかと思えてしまう。

【実質GDP】
Blog20090811_01
source:内閣府

2009年8月 5日 (水)

風雨同舟は呉越同舟にあらず?

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

普段仲の悪い人たちでも共通の利害があったり、ピンチに陥ったりしたときに互いに助け合うことを「呉越同舟」という。この言葉の由来は春秋時代末期(B.C480年頃)に孫子が書いたといわれる兵法書の第11篇「九地」の中にある。春秋時代の呉と越の国は戦争を繰り返すほど仲が悪かったが、両人が同じ船に乗り合わせたとき、舟が転覆しそうになったら互いに協力するだろうというところから来ているが、単に仲の悪い者同士が居合わせる時もこの言葉を使うようだ。

7/27・28と開催された米中経済対話では、バラク・オバマ大統領が孟子「尽心章句」の一節、ヒラリー・クリントン国長官は「人心がひとつになれば、泰山をも動かすことができる」、ティモシー・ガイトナー米財務長官は「風雨同舟」との成語をそれぞれ引用した。「風雨同舟」は共通の利害のために協力する「呉越同舟」とほぼ同じ意味だ。ガイトナー財務長官を知っている人には、同氏が東アフリカ、インド、タイ、中国、日本で生活した経験を持ち、学生時代にアジア研究を専攻しており、卒業後も日本と中国に留学していたことから、「風雨同舟」を中国語で発音しても驚きはなかったと思う。

ある意味、世界中が注目している米中の対話であるが、米国債の購入を増やして欲しい米国と、ドル安を阻止して欲しい中国の本音が見え隠れしたものの、クリントン国務長官の総括では「21世紀における両国の積極的で協力的かつ包括的な関係の基礎を築いた」とお互いに親密さを演出し、保護主義を避けること、北朝鮮の核問題で早期の6か国協議再開、中東の平和、中国の内需拡大、米国の財政赤字削減(景気回復後)、地球温暖化対策では国連の会議で米中が対話の枠組みを設けることなどの覚書を交わしている。

この米中2か国をG2(= Group 2)と呼ぶ向きもあるようだ。中国はGDPで既にドイツを抜き、2010年にも日本を抜き世界第2位の経済大国になろうとしている。ただ、共産党の一党支配の中国と自由主義の米国の100年に一度といわれる経済危機での「風雨同舟」から、危機から脱却後に「呉越同舟」(=単に仲が悪い同士の意)にならなければよいが。

Blog20090805_01
画像はイメージです

2009年7月29日 (水)

コモディティ(商品)価格の上昇に注意

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

今年はガリレオが初めて天体観測をして400年を記念する世界天文年だ。また、人類が初めて月面に降り立った1969年から40年にもあたる。日本では46年ぶりとなる皆既日食の年(残念ながら一部の地域では観測できなかったが)でもあり、宇宙ステーションの実験施設「きぼう」も1982年の構想から27年の時を経て完成に至った。こうしてみると、人類の宇宙への興味は古来から変わらず、尽きることもないと思われる。

あまり大きく取り上げられることはないが、昨年から太陽の黒点の数が減少しているらしい。太陽黒点は約11年の周期で増減をしていて、黒点は周りより温度が低いことを示している。黒点の数は太陽の活動を表しており、数が少ないということは太陽活動が弱いことになる。このため、科学者の中には地球温暖化の心配よりも寒冷化の心配をする人もいるほどだ。事の真偽は時間がたたなければわからないが、温暖化にしろ寒冷化にしろ極端に地球の気候が変動して欲しくないものである。

気候変動が相場に直結するものとして、穀物の価格がある。気象庁のホームページによると、今年もエルニーニョ現象がみられるようだ。エルニーニョ現象とは、南米のペルーやエクアドル沖の海水面の温度が異常に高くなる現象で、これが発生すると異常気象となることが多い。昨年は秋のリーマン・ショックで世界的に物価が下落したが、今年は中国の経済対策効果などから、資源価格も回復してきており、こうした中で、異常気象が起こると量的緩和によって、市場に行き場のないマネーがあふれていることから、思わぬ穀物などの価格高騰につながる可能性がある。

▼気象庁ホームページ(エルニーニョ)
http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/elnino/kanshi_joho/kanshi_joho1.html

2009年7月 1日 (水)

ラッキー・ナンバーはいくつ

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

好きな数字と聞くと千差万別の答えが返ってくるが、ラッキーに続く数字といえば「セブン」が圧倒的に多い、「ラッキー・セブン」の由来には宗教から来たやビジネスから来たなど処々あるが、メジャー・リーグから来たという説が有名だ。1885年にホワイトストッキングス(シカゴ)の選手が7回に打ち上げたフライが風にあおられホームランとなった。この日の試合は、チームの優勝がかかった試合で、勝利投手のジョン・クラークソンが「ラッキーセブンス(7th)」と言ったのが始まりだとか。

日本や中国ではラッキーな数に「八」をあげる人が多い。だが、日本と中国では「八」の意味が多少異なる。日本は「八」の漢字の形が末広がりを連想させることから縁起がよいとなるが、こと中国では「八」の中国語発音が「発財(=お金を儲ける、お金持ちになる)」の「発」の発音に似ているからだそうだ。このため、中国では携帯電話の番号に「8」を入れたい人が多いようだ。特に「18」=「要発(=これから儲かる)」、「58」=「我発(=私は儲かる)」などが人気が高いらしい。

この「八」にこだわる国がある。ご存じのとおり中国だ。昨年秋の以降、世界経済が収縮する中で、成長率8.0%の達成は可能であると、温家宝首相は5月の第11期全国人民代表大会(全人代)で表明した。誰もが達成が難しいと思っていた成長達成の可能性が見えてきた。中国国家統計局のマクロエコノミストの郭同欣氏が公式見解ではないと断っているものの、4-6月期のGDPが8.0%近くに回復するとの見通しを発表した。総額4兆元(約56兆円)に上る景気刺激策の効果が国内消費などに表れたと分析している。現在、中国では「家電下郷」、「汽車(自動車)下郷」と呼ばれ、対象商品の購入に補助金が支払われたり、減税される政策が実施されている。こうした効果がいつまで続くのか疑問視する向きもあり、一部のエコノミストは中国の資源在庫が過剰状態にあると警鐘を鳴らしている。中国のこの成長が持続するようであれば、資源国をはじめとした日本やアジアの近隣諸国にとってはよい牽引役となり、特に資源国にとっては通貨を押し上げる要因になるのではないだろうか。

【中国GDP】
Blog20090701_01
source:FXmuseum,Uedaharlowfx

2009年6月24日 (水)

誰もがババを引きたくない

日本に昔からあるトランプのゲームでババ抜きを知らない人はいないと思う。正式なルールはクイーン(ババ)を1枚抜き51枚のカードで行う。Jokerを加えて53枚で行ったり、任意のカードを抜いて51枚で行う(「ジジ抜き」という)遊び方もある。順番に隣の人のカードを1枚引き、同じ数の札がペアになったら場に捨てて、最後までババを持っていた人が負けというゲームだ。相手がカードを引く時にポーカーフェースを崩さずにババを引かせることを「ババをつかませる」ともいう。

今月16日に初のブラジル、ロシア、インド、中国(通称BRICs)の首脳会合がロシアのエカテリンブルクで行われた。この4カ国は新興工業国で昨年秋のリーマン・ショックまでは経済成長が著しく、2008年のGDPは世界のGDPの約14.6%に達し、人口でも4割強を占めている。また、外貨準備は合計で3兆ドル(289.5兆円)にのぼり、中国だけを見ても2009年3月現在で1兆9537億ドル(188.5兆円)にもなる。ロシアのメドベージェフ大統領は6月2日にCNBC(米金融専門チャンネル)のインタビューに答えて、「世界にはより多くの準備通貨が必要だ」と発言、ドルの準備通貨(基軸通貨)をけん制した。その後もロシアは中国の周小川人民銀行総裁が提唱したIMF(国際通貨基金)の特別引き出し権(SDR)を支持すると表明、中国人民元、ロシアルーブルなどの準備通貨に加えるべきなどと、ドルをけん制する発言を続けた。

BRICs首脳会合では、「移行経済国と発展途上国は国際金融制度においてより大きな発言権を持つべきだ」(イタル・タス通信)と若干穏健な声明を発表して閉幕したが、BRICsの枠組みを強化したい資源、農業中心のロシアとブラジルに対し、輸出やソフト産業が主体の中国やインドは若干立場が異なる。ことに中国は膨大なドルでの外貨準備を抱えており、ドルが下落することによる損失を何としても回避したい立場である。1998年に危機を経験したロシアルーブルや変動相場制へ移行途中である中国人民元が早期に準備通貨の一角となることは事実上無理であり、ロシアがドルに対して強硬路線をとればとるほど、中国は「ババをつかまされる」可能性が高くなりそうだ。

【2007年GDP】
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source:IMF

2009年6月17日 (水)

温暖化どころか氷河期に逆戻り

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

2002年9月17日に小泉元首相が電撃的に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌を訪問し、日朝の早期国交正常化実現に向け、金正日国防委員会委員長と合意に達し、朝鮮半島の平和が進展するかのようにみえた。しかし、2006年10月の地下核実験に続き、本年5月にも第2回目の地下核実験を強行した。こうした国際社会を無視した行動に中国も重い腰を上げ、国連安全保障理事会常任理事国5カ国と日本、韓国を加えた7カ国は、北朝鮮に対する非難と制裁措置を盛り込んだ決議案で合意に達し、週内に採択を目指している。

この決議案が採択された場合、北朝鮮による第3回目の核実験の可能性があると米中央情報局(CIA)が警告していて、長距離弾道ミサイルの発射実験を行うことも考えられる。これまでの実験はまがりなりにも成功していることが救い(開発、実験自体に問題があることは十分危機意識は持っている)であり、最悪の状態で失敗してしまうと北朝鮮の西に位置する日本は甚大な被害を被ることが考えられる。

政治的な問題はさておき、円相場で見てみると、2006年当時の地下核実験の時やシルクワーム型ミサイル発射実験、ノドン、テポドン発射実験のときは、東アジア(日本)の地政学的リスクが高まり、ミサイル発射で約1円の円安になったこともあった。その後、ミサイル発射実験が多数行われるようになり、これによる円安圧力も限定的となってきている。ただ、国連決議案が採択された後に北朝鮮が強硬路線を加速させるようであれば、更に地政学的なリスクが高まり、それに伴う円売りリスクのも増大するが、6カ国協議に戻るか、米国との2国間協議を開始するなど穏健路線に舵を切ると円買いにつながってくる可能性がある。

Blog20090616_01

※地政学的リスク
特定の地域が抱える政治的・軍事的な緊張の高まりが、地理的な位置関係により、近隣する地域の経済、または世界経済全体を不透明にするリスクのこと

ポンド関連は別Blogのポンド一本勝負もご覧ください

2009年6月 2日 (火)

米国の雇用は大丈夫なのか

米自動車大手ゼネラル・モーターズによる連邦破産法11条申請がほぼ確実となってきた。昨年9月のリーマン・ショック以降、米の失業者数は大幅に増加、指標となる非農業部門雇用者数は、直近3カ月で累計192万人(2月68.1万人、3月69.9万人、4月53.9万人)減少している。雇用の喪失は、米国の可処分所得を減らし、購買力を低下させることから、せっかく楽観的な見通しから回復の可能性が高まってきた期待感に水を差すことにもなりかねない。

米国の雇用を見る指標としては、失業率と非農業部門雇用者数の増減、新規失業保険申請件数、失業保険継続受給者数などがある。この中では月次で発表される非農業部門雇用者数の増減が最も注目度が高い。これは全米約35万社の非農業の民間会社から集められているため、広く雇用の状況を反映していると捉えられているからだろう。それに比べ失業率は全米6万人の調査対象からの統計であり、非農業部門雇用者数と比べると少し信用度が低いと思われているのかもしれない。

ただ、失業率は各国の統計の取り方がほぼ同じであることから、比較しやすく、統計としては有用であると思われる。米国の失業率は1929年の世界恐慌時には約25%まで上昇したが、それ以降は1982年11月の10.8%が最高である。失業率の直近3か月(下表)を見てみると、失業率は上昇傾向にあることがわかる。このまま増加傾向を続けると1982年11月の10.8%を上回ってくる可能性もある。

【米労働力】

(単位:1000人) 2月 3月 4月
労働人口 154,214 154,048 154,731
失業者数 12,467 13,161 13,724
失業率 8.08% 8.54% 8.87%
source:Dol.gov

こうした雇用の統計を見るときに、潜在的な失業者も視野に入れておくとよいのではないか。求職意欲喪失者(英語ではdiscouraged workers)といい1か月の間に1回も求職活動をしなかった人たちであるが、雇用環境が悪化すると、失業者の増加とともに求職意欲をなくす人も増加する傾向があることから、潜在的な失業率も押し上げる要因となる。4月の求職意欲喪失者74万人であり、1年前の32.8万人と比べると2倍以上になっていることが見て取れる。求職意欲喪失はを加えた失業率は9.35%となり、今後も米国の雇用の悪化が懸念される。

【失業率、非農業部門雇用者数】
Blog20090602_01
source:Dol.gov

2009年5月26日 (火)

押さえておきたいバルチック海運指数

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

米国の景気が1-3月期で底打ちしたのではないかと伺わせる兆候が出てきている。世界のGDPの約80%を占めるG20が4月に景気刺激対策でコミットしたことや、米国政府・中央銀行の政策がこれまでのところ市場に好感されているように思う。最悪期は脱したとのセンチメント(心理)が、回復期待先行にかなり影響を与えているようだ。

こうした心理面が経済に波及するときに押さえておきたい指標としてバルチック海運指数がある。正確には、ロンドン海運取引所に上場されているバルチック・ドライ・インデックスと言い、鉄鉱石や穀物を運ぶバラ積み(梱包されていない荷物)の不定期貨物船の運賃指標である。この運賃指標は、世界の資源などの移動の活発・不活発を表すバロメータとしての役割を果たし、用船需要が多ければ運賃は上昇する。

昨年秋のリーマン・ショック以降、世界経済の急激な後退から、この海運指数がピークの11,793から約18分の1となる663まで低下した。現在、この海運指数は2,707とボトムからは約4倍となっている。このことは少しずつであるが、資源などの輸送が回復してきたことを表していると思われる。外国為替市場では、豪ドルやカナダドルなど資源国の通貨が堅調に推移しているし、ロイター/ジェフリーズが発表しているCRB指数(国際商品先物指数)もほぼ遅行しているものの上昇してきている。

G20の景気刺激策では、量的緩和による通貨価値の低下の懸念があり、資源からくるインフレを予測する指標にもなることから、週に最低一度くらいは見ておきたい指標だ。

【CRB指数、バルチック海運指数】
Blog20090526_01
source:Reuters/Jeffries,Bloomberg

バルチック海運指数(Bloomberg.com:英語)
http://www.bloomberg.com/apps/quote?ticker=BDIY%3AIND

2009年5月20日 (水)

米景気回復がドル安(円高)要因となる理由

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

米政府が行ったストレステスト(健全性審査)の結果が公表され、米金融機関に対する安心感と市場センチメント(心理)の改善から2009年の中頃から後半にかけての景気回復期待が高まった。しかし、懸念が燻ぶる欧州や英国に比べ、景気回復の傾向が見えてきた米国のドルが下落してきた。外国為替は2国間の景況感の差を表すと言われているが、他国に比べ景況感がよくなっているドルが売られている(安くなっている)ことに違和感がある方も多いのではないだろうか。

サブプライム問題からの経済危機は世界規模であり、ドルに関しては、基軸通貨として見る必要があるのではないかと思われる。今回のドル安の要因として考えられるものを挙げてみた。

(1)ストレステストの結果、昨年秋以降の信用不安からのドル保有の意味が薄れてきた。
(2)最悪期は脱したとの見方で、金利(利回り)の低いドル資産から他の資産へシフトしだした。
(3)欧州の金融機関に不安が残ることから、ユーロへのレパトリ(資金還流)が起こってきた。
(4)中国の回復により、エマージング(新興工業国)やアジア・オセアニアの回復に期待が高まった。
(5)米国の通貨供給の増加から、ドルの価値が低下する懸念が強くなってきた。

ドルの下落は、昨年秋のリーマン・ショック以降に米国の経済指標の悪化にもかかわらずドルが上昇し、その後に回復傾向を示したがドルが高止まりしていた動きの巻き戻しである。この動きが起こることはある程度の予測ができると思っている。個人的に見ているものであるが、CBOEに上場されている投資家恐怖心理指数(VIX)とFRBが発表しているドルインデックスを一つのグラフにしてみると歪みが発生していること、時期は特定できないが解消に向かうことが推測できた。この動きがさらに続くかどうかは未定だが、週末の市場が休みのときにでもチェックをしておくとよいのではないか。今後は、更に米国のマネーサプライなどにも注目していく必要があると思っている。

【投資家恐怖心理指数、ドル/円】
Blog20090519_01
source:CBOE,FXmuseum,Uedaharlowfx

投資家恐怖心理指数(英語)
http://www.cboe.com/micro/vix/pricecharts.aspx

ドルインデックス[2)MAJOR CURRENCY MAR73=100を参照されたい](英語)
http://www.federalreserve.gov/releases/h10/Current/default.htm

2009年5月12日 (火)

ストレステスト(健全性審査)の意味

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

米政府が大手金融機関19行に対して行ったストレステスト(健全性審査)の結果が公表された。当初は各金融機関へ結果を通知するものであったが、その後、審査基準が公表され市場に安心感が出た。しかし、当初の発表予定の5月4日から7日の午後(日本時間8日午前6時)に延期。理由はメディアの憶測ではあるものの、結果内容に数行が難色を示したことらしい。また、公式な結果発表を前に、大多数が関係者の話として内容をリーク、特に「資本の増強が必要ない」とされたところは、市場に早く安心感を伝えたかったかのように。

ストレステストとは製品でいえば耐久性を試すものであるし、情報処理関連では負荷をかけて正常に処理が行われるかを試すものである。どちらも、いろいろな条件で苛酷なテストを行っているのではないだろうか。

こうした観点から見ると、今回のストレステストの基準となる経済のシナリオがやや楽観的ではないだろうか(基準は下記参照)。4/24発行のメルマガでも触れたが、基準をIMFの成長見通しの2009年の-2.9%より厳しくしているが、2010の0.0%と比べると、米経済回復への楽観期待が多分に含まれているように思われる。

経済のシナリオ    2009    2010
-----------------------------------------
実質GDP
 見通し        -2.0%    +2.1%
 審査基準        -3.3%    +0.5%
-----------------------------------------
失業率
 見通し        8.4%    8.8%
 審査基準        8.9%    10.3%
-----------------------------------------
住宅価格
 見通し        -14%    -4%
 審査基準        -22%    -7%
-----------------------------------------
※ストレステストの基準については下記PDF(英語)を参照
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20090424a1.pdf

今回のストレステストは、シナリオの条件下で2010年末までほとんどの金融機関では資本が十分足りている(19行中10行が資本増強を必要とされたが、既に資本増強に動いている)ことを示しており、市場に安心感を与えるという意味では一定の成果があったと思われる。ただ、経済環境は刻々と変化しており、シナリオが悲観的に変われば再度のストレステストの可能性も出てこよう。その時は再びドルの信認が問われることとなる。

【ストレステスト(健全性検査)結果】

銀行名 資本増強必要額
バンク・オブ・アメリカ 339億ドル
ウエルズ・ファーゴ 137億ドル
GMAC 115億ドル
シティ・グループ 55億ドル
リージョンズ・フィナンシャル 25億ドル
モルガン・スタンレー 18億ドル
キーコープ 18億ドル
サントラスト・バンクス 22億ドル
フィフス・サード・バンコープ 11億ドル
PNCフィナンシャル・サービシズ 6億ドル
資本増強必要なし
JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、USバンコープ、アメリカン・エキスプレス、メットライフ、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン、ステート・ストリート、キャピタル・ワン・フィナンシャル、BB&T
source:米財務省

2009年5月 5日 (火)

新型インフルエンザの影響は?

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

メキシコで発生した新型インフルエンザが急速に世界中に広がっている。4月27日にWHO(世界保健機構)から「継続的に人から人への感染がみられる状態になった」というフェーズ4が宣言され、30日には「かなりの数の人から人への感染がある証拠がある」とのフェーズ5が宣言された。今後、「効率よく持続した、人から人への感染が確立」とのフェーズ6へ移行するかどうかは微妙だが、100年に1度といわれる経済危機にパンデミックが起こってしまうと、少しずつ回復しかけている景気に対して、「泣きっ面に蜂」となる可能性がある。メキシコは、米国とカナダの間でNAFTA(North American Free Trade Agreement)=北米自由貿易協定を結んでいる。NAFTAは人口約4.3億人、域内GDP約11.9兆ドル(いずれも2005年現在)と経済規模、人口ともEUを凌いでいる。

NAFTAの目的
(1)商品・サービスの貿易障壁を撤廃し、国境を越えた移動を促進すること
(2)公正な競争条件を促進すること
(3)投資機会を拡大すること
(4)知的財産権の保護を行うこと
(5)紛争解決手続を確立すること
(6)協定の拡大・強化のための3国間、地域間、多国間の枠組みを確立すること

NAFTA発効後、1993年から2004年までに、米国からメキシコへの輸出額は約166%増(同時期の対カナダ輸出額は約89%増、輸出額全体は約76%増)、米国のメキシコからの輸入額は約290%増(同時期の対カナダ輸入額は約130%増、輸入額全体は約153%増)と、域内の貿易は拡大してきている。出所:外務省

今回の新型インフルエンザによるパンデミックが起こり、人や物の移動が困難になった場合には、NAFTAの域内での輸出入のみならず、個人消費の停滞や食糧価格の高騰などの可能性が高まり、せっかく総悲観から少し楽観に変化の兆しが出ている世界経済が再び収縮する可能性が出てくる。そうなってしまうと、これまで各国が行ってきた財政出動などの効果も半減以下となるだろうから、危機からの脱出までにさらに時間がかかることになってしまう。これまでのところ、新型インフルエンザの為替への影響は限定的となっているが、被害が拡大傾向を示すようであれば、セイフ・ヘイブン(安全)な国の通貨が買われることになろう。

【新型インフルエンザ発生状況】
Blog20090504_01
sourceWHO,各国政府等(データは5/3現在のものです)

2009年4月21日 (火)

中国が独生子女(ひとりっこ)政策見直しに踏み切るか

中国の独生子女政策に見直しの機運が出ている。人口は2007年12月末現在で13億2129万人。1年間では681万人増加した。独生子女政策は人口増加が食糧や燃料不足を引き起こすと危惧した中国政府が70年代から勧めていた晩婚と少子を、79年に正式に政策にしたものである。第2子を産むと罰金、公務員なら減給されるという政策だけに浸透が早く合計特殊出生率(女性が一生に産む子供の数を示す)も2を割り込む水準まで低下している。

この政策によって人口増加の抑止効果は3億人とも4億人とも言われているが、65歳以上の人口が1990年に5.57%、2000年に6.96%、2007年に9.36%となり、国連による将来人口推計では2010年に11.9%、2020年に16.2%と急激に少子高齢化が進むリスクを抱えている。更に独生子女政策下では、男子を好む傾向が高いため、20歳未満では男女比が1.2対1と男が多くいびつな構成となっている。

こうした中で3月の全国人民代表大会での人民大学学長の紀宝成代表による、第2子までの承認を盛り込んだ「生育政策の早期調整に関する提案」が注目を集めている。背景には前出の少子高齢化問題と昨年の四川大震災で子供を失った親の悲劇がある。中国の世論も75%以上が賛成していて、世論に後押しされて政策を転換する可能性もある。

政策の転換は中国の内需拡大や労働人口の増加など成長率に寄与する反面、食料やエネルギー価格を押し上げ、過剰流動性(マネーサプライなど)が増大している環境下では、高インフレを招きかねない。このため、中国の人口政策の転換は、慎重に行わないとかなりのリスクを背負うことになりそうだ。また、こうした人口政策をとっていない第2位のインドが中国の人口を抜くとの推計もあり、人口増加が経済に与える影響が軽視できない時期が来るであろう。

2009年4月13日 (月)

日本の街角景気は持ち直している

為替や株などの投資をしていると、毎日いろいろな経済指標が発表されていて、少なからず相場が動くことに気づいてくる。経済も生き物であり、景気の良し悪しは消費者の心理によるところが大きい。そのため、購買担当者の景況感調査や消費者信頼感調査などが行われているが、その中で景気ウォッチャー調査という、消費者の感覚により近い調査がある。この統計は、一般商店の店主やタクシー運転手、競馬場の職員やスナックの経営者に至る街角のあらゆる職業の中から選ばれた2,050人の調査結果を集計し、内閣府が公表している。

アンケートの内容は下記のページ(PDF)で見ることができる。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher/chousahyo.pdf

Blog20090412_01 この統計で現状判断DIは本年1月から3か月連続で持ち直しを見せている。昨年10-12月に景気悪化のペースが急拡大したが、街角では定額給付金や高速道路の料金引き下げなどの効果が出ているのか、一部で明るい兆しもでてきているようだ。ただ、景気判断理由集(下記URL参照)を見ると家計部門での個人消費の慎重さはまだ残っているように思われる。

政府・与党は2009年度補正予算案の財政支出(真水)を約15兆円、事業規模を56兆円超とする方向で、27日に補正予算案と関連法案を国会に提出する予定である。この追加対策の内容では、街角景気への効果は限定的と個人的には思っているが、引き続き街角判断の改善が続くようであれば、10-12月期で大幅な在庫調整が進んだ日本に対しての見方が変わってくるかもしれない。市場の目が「日本の景気回復」に向くと円高につながってくる可能性がある。

景気判断理由集
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2009/0408watcher/watcher2.pdf

2009年3月23日 (月)

日本の当局の介入はあるか

3月12日にスイス国立銀行(SNB)は政策金利の0.25%の引き下げと外国為替市場でスイスフラン売りの市場介入を行った。同時に社債の買取という量的緩和も実施した。スイス国立銀行の介入は1995年8月以来初めてとなった。市場では非不胎化(※1)の介入で量的緩和も実施したとの見方がある。このスイス国立銀行の介入から本邦当局(財務省、日銀)の介入の可能性を喧伝した人たちもいたようだ。

為替介入の説明は日銀の下記ページに詳しく出ているが、財務大臣が介入の量、タイミング等を判断、日銀は財務大臣の指示にしたがい、介入を実施することになる。このことからわかるとおり、日銀が単独で介入を行うことはありえない。ただし、日銀は財務省との連絡や委託介入の際には委託先の中央銀行との調整役となることから、日銀のディーラーが市場をモニタリングしたりすることから、「日銀によるレートチェック」が入ったなどという噂が市場に流れることになる。
http://www.boj.or.jp/type/exp/seisaku/expkainyu.htm

Blog20090323_01


では、実際に日本は市場介入に踏み切るのであろうか。答えは「否」の可能性が高い。1月18日現在で1ドル=98円台の水準では円高とは言い難い。1ドル=xx円が円高という基準は存在しないが、日銀が公表している実質実効為替レート(※2)を一つの指標として考えると、2月現在で127.2となっていて、この水準は2001年9月頃と同じである。1ドル=79.75円まで円高が進んだ1995年4月の165.5と比べるとわかるとおり介入を行うほどの円高水準ではないと思われる。ただ、介入のときに語られるもう一つのキーワードの「株安」はバブル崩壊後の最安値を一時更新したこともあり、「株安」と「円高」がセットで訪れたときに4年以上の沈黙を破って日本の単独介入が行われるのではないかと思う。

※1 非不胎化介入
 介入で市場に放出した資金を国債の買いや売りといった別のオペレーションで回収せずにそのまま市場に残しておく

※2 実質実効為替レート
 対外競争力を捉えるため日本と貿易相手国の貿易ウエイトで加重平均した名目為替レートに物価指数を加味したもの

2009年3月16日 (月)

外需(貿易)依存型の中国と日本の異なる事情

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

昨年秋のリーマン・ブラザーズ破綻のショックから、世界的な金融機関の信用の収縮につながり、信用不安が実体経済に波及し、更にそれが金融の信用不安に戻ってくるという負のスパイラルに陥っている。金融の信用不安は世界のGDPの3割弱を占めるといわれている米国経済を後退させ、米のGDPの約7割を占めるといわれている個人消費を冷え込ませた。この結果、外需に依存している日本は10-12月期のGDPが年率換算で12.3%のマイナス(第2次速報値)になるなど、比較的影響が少ないとみられていた日本の経済も安全ではなく、第1次速報値の発表を境に、円安が進んだ格好となった。一方、日本と同じような輸出主導型の産業構造をもつ中国は10-12月期のGDPが6.8%と減速はしたものの、日本の落ち込みとは大きく異なっている。

米国の通関ベースの輸入実績から昨年9月と12月を比較すると、中国の輸出は約20%の減、日本は同10%の減と日本の減少幅は少なくなっている。ただ、小売を主導する既存店の売り上げを見ると、ディスカウントのウォルマートがほぼ一人勝ちの状態で2月は前年比5.1%の増加となっていて、百貨店のJCペニーは前年比8.8%の減少だ。裏を返すと、日本の付加価値の高い白物家電や液晶テレビ、自動車などの品目は売れないが、中国の低価格商品は売れているということだ。急激な逆資産効果で可処分所得が低下した米の消費者は低価格商品の購買を高めた結果、貿易統計を見ないと断言はできないが、通貨ベースで減少した中国からの輸入を2009年に入って増加させているのではないだろうか。

この流れが継続すると世界経済の悪化が日本の貿易黒字体質を赤字体質に変化させ、潜在的な円安要因になる日も近いかもしれない。また、中国が日本のGDPを抜くのも2010年を待たず、2009年になるのではないだろうか。

2009年2月28日 (土)

材料は後からついてくる

※このコラムは上田ハーローFX 週間ニュースに掲載しているものです。

今回の急激な円安については、発表される米国の経済指標や米株価の下落を無視したようなドル高となっていることもあり、「不思議だ」「おかしい」という言葉をよく聞く。確かに一部のセンチメント調査が改善を示している以外では、雇用、住宅等は依然として底入れの気配も見えない。この「おかしい」から「相場がまちがっている」になると、損失への危険信号が点灯することになる。

筆者も以前はこういうときに意地を張って考えを変えず何度か痛い目にあった経験がある。痛い目にあう前に早めに「相場が動く方向が正しい」ということに気づく必要がある。相場が先に動き理由が後からいくらでも出てくる例には事欠かない。今回の円安についても、日米の長期金利の拡大、貿易赤字に転落した日本からの円買い需要の減少、麻生政権のレイムダックなど。また、ドル高についても米政府の金融安定化策の効果が出てきた(米ドルの短期市場におけるリスクプレミアムが縮小)、FDIC(預金保険公社)が米金融機関発行の債券の債務保証を行っていて起債が盛んなことなどだ。

今回、円高を予想していた人たちは外れてしまった(筆者もその一人)が、何度か逃げるチャンスはあったと思う。

①21日移動平均線を上に抜けたとき(89.74円)
②引値が55日移動平均線を上に抜けたとき(91.83円)
③日足の一目均衡表の転換線が基準線を上に抜けたとき(90.36円)
④日足の一目均衡表の雲の中に2度目に入ったとき(91.52円)
⑤日足の引値が一目均衡表の雲の上に抜けたとき(94.16円)
⑥94.65円(1/6の高値)を上に抜けたとき
⑦95.00円(5円刻みの節目)を上に抜けたとき
⑧200日移動平均線を上に抜けたとき(100.35円)

【21、55、200日移動平均線】
Blog20090227_01
source:FXmuseum,Uedaharlowfx

【一目均衡表】
Blog20090227_02
source:FXmuseum,Uedaharlowfx

今回の円安は相場に対しては常に「純」で臨まなければならないということを思い起こさせてくれたようだ。

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